たこやきレインボーの軟体性

私が推しているアイドル「たこやきレインボー」の東阪Zepp 4daysツアー『軟体的なボヤージュ〜あなたとの約束〜』がもうすぐ始まる。とてもとても楽しみで、ここ最近の私の脳内はこの話題で持ちきりと言っても過言ではない。

『軟体的なボヤージュ』はたこやきレインボーの3rdアルバムのタイトルである。「地図のない航海（ボヤージュ）の荒波を、たこのように柔軟に＝軟体的に乗り越えて行こう」（ナタリーさんの記事から引用）という意味が込められているらしい。

このアルバムタイトルが発表されたとき、すごくしっくりきたのを覚えている。とても「たこ虹*1らしい」と思った。「軟体的」というのは造語らしいが、たこやきレインボーを表すのにぴったりである。それは名前に軟体生物の「たこ」が入っているからというだけではない。たこやきレインボーというアイドルには「軟体性」がある。私はそう感じている。

表現への没入

彼女たちは新しい表現を柔軟に取り込んでみせる。新しい表現に柔軟に入り込んでみせる、の方が正しいかもしれない。しかも、それぞれの個性を崩すことなく、まさに「軟体的」にそれをやってのける。

アイドルの表現はジャンルに縛りがない。たこやきレインボーも、これまで様々なジャンルの表現をしてきた。ポップ、ロック、ファンク、パンク、テクノ、レゲエ。私は音楽に詳しくないのでこれ以上ジャンルの名称を挙げることは出来ないが、おそらく他にもたくさん。

そんな中でたこやきレインボーが凄いのは、多岐にわたるジャンルの楽曲それぞれへの没入具合である。「たこやきレインボーがこの楽曲をやったらこうなりました」ではなく、「その楽曲世界の住人となったたこやきレインボー」がそこにいる。しかも、世界観に溶け込むために個性を殺して別人になり切るのではなく、彼女たちの個性は残したままに、楽曲の世界観にするりと入り込んで表現してみせる。観ている方もその世界観に引き込まれ、没入する。観客はたこやきレインボーと一緒に色んな世界観の中を旅できる。色んな世界に行って、色んな経験をし、色んな感情を味わう。たこやきレインボーはそういうライブをする。

たこやきレインボー / なれたらなぁ

予測不能な進化

たこやきレインボーのメンバーは元から個性的だが、彼女たちの感性、個性、スキルは、現在進行形でさらにそれぞれ別方向に伸びていっている。

ある者は料理を作り、ある者はファッションを研究する。ある者は映画を観て、ある者は夢野久作の『ドグラ・マグラ』を読み、ある者はギターを弾き語る。それぞれが別のものに食指を動かされ、それぞれに異なる文化に触れ、何かを得る。同じグループで活動していることが奇跡的だと思えるほどに、彼女たちの文化的活動は独立している。だが、彼女たちは決して別方向に歩み去っているわけではない。彼女たちの中心には「たこやきレインボー」がある。彼女たちは「たこやきレインボー」を中心に、それぞれが別方向に、自己の領域を少しずつ伸ばしていっている。それはまるでたこの足のように、軟体的に。

たこやきレインボーは日々進化している。レッスンやライブ経験を通じて歌やダンスが上手くなるというのももちろんあるが、それだけではない。個性豊かなメンバーが、それぞれの方向に向かって、自分の領域を広げていっている。それがグループに予測不能な進化をもたらす。

彼女たちが今後どんなものに興味を持ち、どんな風にそれと接し、何を得るのか。それによってたこやきレインボーの進化後の姿は「軟体的」に変わっていくだろう。